大人気連載中の漫画ゴールデンカムイ。
「和風闇鍋ウエスタン」と称されるほど様々な魅力が詰まったこの作品は、作者野田先生の興味と知識がたっぷりと活かされているのです。
その中で男女ともに魅了し続けているのが、主人公である「不死身の杉元」こと杉元佐一。
実は彼にはモデルがいます。
ここではそのモデルとなった人物と、その人物からヒントを得たゴールデンカムイの原点のお話をご紹介したいと思います!
目次
【ゴールデンカムイ】杉元佐一とは?
ゴールデンカムイの主人公で元陸軍軍人。
強さと優しさと可愛さを併せ持った魅力溢れるキャラクターです。
除隊後、戦死した親友の遺言により一攫千金を目指し北海道で砂金採りをしていたところ、アイヌの埋蔵金(金塊)に関する話を聞き、偶然出会ったアイヌの少女アシリパと共に金塊争奪戦へ身を投じていくこととなりました。
日露戦争での鬼神の如き戦いぶりから「不死身の杉元」として陸軍内で名を馳せており、作中でトップクラスの強さを誇ります。
【ゴールデンカムイ】名前のモデルは作者のひいおじいさん
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2行目下に杉本佐一と書かれています
杉元の名前のモデルは実は作者・野田サトル先生の曾祖父。
その名も杉本佐一さん!
杉本佐一さんも杉元と同じ日露戦争を駆けた軍人でした。
【ゴールデンカムイ】一等卒として日露戦争を経験
野田先生のひいおじいさんである杉本佐一さんは、陸軍で第七師団の歩兵27連隊乗馬隊に所属していたそうです。
いわゆる北鎮部隊!北の守りを担う陸軍最強の師団です。
作中で言えば鶴見中尉のところですね。
一等卒として日露戦争に出征し、旅順攻囲戦や二〇三高地、奉天会戦を経験したそうです。
【ゴールデンカムイ】500名の命を救った曽祖父たち
そのひいおじいさんの武勇として、野田先生のブログにはこんなエピソードも書かれています。
ある戦場でひいおじいさんを含む500名ほどの大隊が2000人のロシア兵に包囲され絶体絶命になりました。
そんな状況の中、包囲網を突破し味方の援軍を呼ぶ任務を命じられたのがひいおじいさん。
もう一人ともに、二名でロシア兵の中を全力疾走することになりましたが、なんと奇跡的に本人たちも馬も無傷で突破し、そして4000人の援軍を連れて戻ってきたとのこと。
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曽祖父の杉本佐一さんの功績:金鵄勲章
援軍を見たロシア兵は撤退したため、大隊は一人の死者も出さずに済んだということで、その功績が認められて二階級特進、金鵄勲章を賜ったという話です。
500名もの命を救ったひいおじいさんたちは杉元同様まさに英雄ですよね。
ちなみに60代の時に結核で亡くなったそうです。
【ゴールデンカムイ】人物のモデルは舩坂弘?
名前のモデルとなっている作者の曾祖父・杉本佐一さんも度胸と強運を持ち合わせた屈強な兵士で英雄ではありますが、作中の主人公・杉元佐一の驚異的な強さ、「不死身」と言われるそのキャラクターのモデルはまた別だと言われています。
有力だとされているのが、元陸軍軍人の船坂弘さんです。
【ゴールデンカムイ】不死身の分隊長と呼ばれていた
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出典:アンガウルの戦い
船坂弘は太平洋戦争に出征した軍人(最終階級は軍曹)で、彼を形容する名が「不死身の分隊長」。
船坂の名を有名にしたのがアンガウルの戦いなのですが、そこで彼は絶望的な戦況でも負傷していてもなお鬼神の如き戦いぶりで次々に敵兵を討ち倒すなど奮闘し、その姿を見た部隊員たちからそう呼ばれていたそうです。
【ゴールデンカムイ】共通点が多い舩坂弘軍曹と杉本佐一
さてモデルの有力説として船坂弘氏を挙げましたが、彼が何故そう言われるのか、杉元との共通点をいくつかご紹介いたします。
- あだ名
先述の通り船坂は「不死身の分隊長」と呼ばれていました。
「不死身」と呼ばれる点が共通していますね。
- 鬼神の如き戦闘力
どんなに絶望的状況でも重傷でも、拳銃など撃ちまくり銃剣で突きまくり最終的にはそれを槍のように投げつけるなど凄まじい戦いぶりだったとされる船坂。
まさに鬼神の如き戦いぶりと言われる杉元を彷彿とさせる恐ろしい戦闘力ですね。
ちなみに船坂は銃剣術・射撃どちらも徽章を持つほど腕が優れていたそうなので、リアルな戦闘技術で言えば杉元より上だったかもしれません。
- 驚異の回復力
船坂は軍医が見放すほどの重傷でも数日で回復していたと言われています。
本人曰く「生まれつき傷が治りやすい体質」とのことですが…正直それでは説明出来ないほどのエピソードばかりです。
杉元も「瀕死の重傷を負っても翌日には走り回ってる」「軍医が諦めるような怪我でも翌日には治ってた」などと言われていますし、網走監獄にて頭を撃ち抜かれた後もすぐ復活し普通におにぎりを食べていますので、この異常なまでの回復力が共通していますよね。
- 首に銃弾
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船坂には敵陣に単身突撃するという驚異的な逸話があるのですが、その際に彼は頸部を撃たれました。
杉元も作中第1話、戦争の回想で頸部を撃たれています。
ちなみに船坂はそれで昏倒し、アメリカ軍の野戦病院に運ばれ戦死と判断されるのですが、なんと3日後に復活したそうです。
- 死ねない
不死身の船坂と言えどもいよいよ自決を決意するほどの重傷になったこともあります。
しかし自決用の手榴弾は不発でした。
その時に船坂は
「何故死ねない。まだ死なせてもらえないのか」
と絶望したと言います。
それほどの絶望感は無いにしても「また生き残った」と語る杉元と共通する天命を感じさせますよね。
こう並べてみると杉元のモデル=船坂弘説が濃厚だと感じますが、そもそも漫画のキャラクターと同等に語れるこの存在が凄すぎます。
【ゴールデンカムイ】曽祖父の屯田兵から題材のヒントを得る
主人公の名前にも反映されているように、野田先生は日露戦争帰りのひいおじいさんからゴールデンカムイという作品を作るヒントを得ています。
ひいおじいさんが戦争に行った話は野田先生の家系では伝わっていたようですが、詳しい資料は札幌市の公文書館に残っていたそうです。
ひいおじいさんは人物・人柄としては杉元と関係がないようですが、他のどの役割でもなく主人公の名前に起用するところに尊敬や愛情を感じますよね。
【ゴールデンカムイ】担当から狩猟漫画を勧められた
もうひとつのきっかけは担当さん。
前作「スピナマラダ!」を終えた野田先生は、次の候補として担当さんに猟師の話を勧められました。
その時手渡されたのが熊谷達也さんの「銀狼王」という小説。
開拓期の北海道で生き残っている銀色の毛の狼を追いかけるという話なのですが、主人公の名前が二瓶なんです。
スピナマラダに二瓶利光というキャラクターがいるのですが、そこで運命を感じたそう。
天啓という感じですね。
二瓶鉄造が主役の話だったらそれはそれでかなり興味はありますが、そこにひいおじいさんの話やアイヌ、埋蔵金伝説、熊害、土方歳三や脱獄王など野田先生が興味を持った様々な要素を取り入れ、ゴールデンカムイという名作が出来たというわけです。
【ゴールデンカムイ】アイヌ文化を作者自身が細かく取材
ゴールデンカムイの大きな魅力であり特徴がアイヌの文化を知れること。
野田先生は元々作品のネタに対する取材や勉強に時間をかけるそうなのですが、ゴールデンカムイに関しても膨大な資料を参考にすることはもちろん、実際に現地に取材へ行くことも度々あるそうです。
アイヌの方々に直にお話を聞いたり、ジビエ料理も食べたりしているようですが、鹿や熊、さらにはアナグマの頭・脳みそ・目玉なども自身で食されているそうで驚きです。
そういった緻密な取材が存分に活かされているからこそ、何気ない1コマ1コマがリアルで魅了されてしまうんですよね。
その丁寧な描写には野田先生の、アイヌに対しての真摯な姿勢が表れているかと思います。
【ゴールデンカムイ】作者にとって念願の人気作品が完成
曾祖父、担当さん、歴史や伝説、ジビエ料理など様々な要素を詰め込んだゴールデンカムイ。
しっかりとした取材の元に描かれた史実を交えた緻密なストーリーと明るく強く面白いアイヌが話題を呼び、2016年には「マンガ大賞2016」で大賞を受賞、2018年にはアニメ化までされる大人気漫画となったのです。
まとめ
作者のひいおじいさんにしても船坂弘さんにしてもそうですが、戦争という死が隣り合わせの場所で問われる生への精神力は、奇跡とも呼べる事象を引き寄せるのかもしれません。
日露戦争後が舞台であるゴールデンカムイも、杉元をはじめとして同じく戦争や戦を生き残ってきた男たちが金塊争奪戦を繰り広げていると思うと深みが増しますね。
たくさんの知識を盛り込みここまで面白く昇華させられているゴールデンカムイはやはりただの漫画ではありません。
細かい描写や時代背景ひとつひとつにも要注目です!

⇒函館五稜郭編!!杉元の最終決戦!!不死身の男はどんな戦い・・
⇒函館五稜郭編!!鶴見VS杉元!!鶴見が見せた微笑みのワケ・・
杉本佐市と除籍戸籍には記載されてる。出身地は岐阜県本巣郡東根尾村。濃尾大震災で壊滅的な被害を受けたため、北見屯田(端野 野付牛 相内 南湧別 北湧別〕召募検査に合格し、30年に屯田兵として紋別郡湧別村(南湧別)兵村三区155に家族(父母兄姉妹〕共に移住。屯田兵騎馬隊に属し、37年に隣家の野田寅記(熊本県玉名郡東郷村出身〕の 妹 マツと婚姻。その為、出身地が九州説となったのでないでしょうが。祖父母達から37-38年日露戦争で500名の部隊が2000名の露軍に包囲され、絶対絶命時に援軍を求める伝令とし、使命を成し遂げ部隊全案が助かった それが勲八等 功七級金鵄勲章 と聞いた事があります。歩兵27連隊乗馬隊の面目躍如だったでしょう。昭和19年7月1日に亡くなってます。