アイヌの金塊を奪い、その隠し場所への暗号となる刺青を囚人達に彫り、娘であるアシリパにそれを解く鍵を託したというウイルク。
ゴールデンカムイの本筋において最も重要な人物であるにも関わらず、ほぼ誰かの回想でしか登場せず非常に謎の多いキャラクターとなっています。
ここでは、少しずつ明かされていくウイルクに関する情報からその人物像を探っていくことにします。
目次
【ゴールデンカムイ】仲間を殺し金塊を奪った張本人
ウイルクは物語の始まりに故人として登場しました。
アイヌの人々が和人に抵抗するため密かに集めていた金塊。
その金塊を移動中に、仲間を殺しひとりで奪ったというのが〝のっぺらぼう〟と呼ばれる男で、ウイルクもその時に殺されたという事でした。
アシリパは父の死の真相を知るために、のっぺらぼうが収監されている網走監獄へと旅に出ることになります。
ところが道中合流したキロランケによれば、ウイルクこそがのっぺらぼうだと言うのです。
アシリパ達の目的は、のっぺらぼうに直接会って真実を確かめることとなりました。
のっぺらぼうが奪ったとされる金塊、噂では75kg(8億円相当)なのですが、本当は北海道各地から集められたものでその額75トン(8千億円相当)だというのです。
ウイルクがのっぺらぼうだとすれば、何故それほどの資金を求めたのでしょうか。
【ゴールデンカムイ】ポーランド人と樺太アイヌのハーフ
ウイルクのルーツは南樺太です。
彼はポーランド人の父親と樺太アイヌの母親の間に生まれました。
幼少期を南樺太で過ごしていましたが、その頃に千島・樺太交換条約が結ばれます。
千島を日本領にする代わりに樺太をロシア領にするという内容ですが、樺太は当時どちらの国のものでもなかったので、住んでいた人々(特にウイルクのいた南樺太の人々)は強制的に生活を変えられることになりました。
南樺太にいた和人は北海道へ戻り、樺太アイヌは国籍を選ばされ、それによっては北海道へ移住することに。
ウイルクは父親がポーランド系だったので樺太に残りましたが、そうした国同士の都合に巻き込まれた樺太アイヌは感染病などにも見舞われ、その数を減らしていきました。
そのうちにウイルクの故郷の村も消えてしまうこととなります。
国と国との間でひとつの文化がすり潰されていく様を感じたウイルクは、青年時に極東の少数民族のキロランケとともにソフィアら革命家の解放運動に加わりました。
そしてロシアの皇帝を暗殺し、逃亡生活の末に北海道へ渡ります。
【ゴールデンカムイ】ひとりで育てアシㇼパさんに狩りを教えた
北海道に渡ったウイルクは妻を持ち、彼女に北海道アイヌの文化や信仰を教わっていきました。
そして2人の間に娘のアシリパが産まれましたが、直後に妻が病死してしまい、ひとりでアシリパを育てていくことになります。
ウイルクは一人娘のアシリパに北海道や樺太の文化や信仰と、山での狩りや食事、罠などを教えていきました。
「中途半端な甘さを持つな。弱い者は喰われる」
というシビアな方針で自然と共に暮らし、アシリパはアイヌの女性としての嗜みは身につけず、自然の中で生きる術と合理的で冷静な判断力を持った逞しい少女に成長しました。
【ゴールデンカムイ】網走監獄に収監されている「のっぺらぼう」
ウイルクの真相を確かめる旅の末に網走監獄に到着したアシリパ達は、ついにのっぺらぼうと対面しました。
皮膚や耳鼻が欠損した異様な姿はまさに噂通りののっぺらぼうでしたが、彼はウイルクではありませんでした。
のっぺらぼうが自分の父ではないとわかりアシリパが失望とも安堵とも取れる表情を浮かべたのも束の間、突然のっぺらぼうが大声で叫び出し、杉元達の侵入がバレてしまいます。
そののっぺらぼうは犬童四郎助の用意していた囮用の偽物だったのです。
そこへ第七師団も乱入し網走監獄で交戦が始まった中、犬童はひとり教誨堂に向かいました。
なんとその地下にはもうひとりのっぺらぼう、本物ののっぺらぼうが閉じ込められていたのです。
【ゴールデンカムイ】アシㇼパさんと同じ青い瞳
監獄では第七師団が大暴れ、教誨堂では犬童と土方歳三が因縁の対決をしている最中、外へ逃げたのっぺらぼうを杉元が偶然見つけます。
光に照らされたそのおぞましい顔には、なんと綺麗な碧い瞳がついていました。
アシリパと同じ瞳を持つそののっぺらぼうは、杉元の持っていた小刀がアシリパの物だとすぐに気付きます。
つまり本物ののっぺらぼうは本当にアシリパの父ウイルクだったのです。
【ゴールデンカムイ】24人の囚人に刺青
本物ののっぺらぼうだったということは、それの手掛かりとなる刺青を24人の囚人達に彫った張本人だということ。
皮を剥ぐことが前提にデザインされた刺青、それを24人もの囚人達に彫り脱走させ、アシリパのいる小樽に行くように仕向けたということです。
それほど大掛かりな仕掛けの中には、そうするだけの強い目的があったからに他なりません。
【ゴールデンカムイ】尾形に殺される
杉元に確保されたウイルクは、言葉を交わすうちに杉元をアシリパの友人だと信頼し、アイヌを殺したのは自分ではないと告げます。
更にアシリパへの言葉を託そうとした矢先に尾形に頭部を狙撃され亡くなってしまいました。
【ゴールデンカムイ】幼い頃に感じたオオカミへの憧れ
真意が謎のまま殺されてしまったウイルク。
しかしその名を探ることによって彼の生き様が少し見えてきました。
ウイルクはポーランド人の祖父に付けられた名前で、その意味はポーランド語で〝狼〟。
ウイルクが狼に強く憧れていたため付けられました。
その憧れは、幼い頃に森で知った狼の生態にあります。
狼は序列社会である群れを形成していて、所属する彼らはそれぞれの役割を持ち効率的に生きている生き物。
だからこそ自分たちが生き残るために、時にはその役割を担えなくなった仲間を殺すこともあります。
その合理的な生き様を目の当たりにしたウイルクは強烈に心惹かれ、生きるために純粋な狼のような生き物になりたいと願いました。
そしてウイルクは後にロシアでの逃亡中に瀕死の仲間を殺すというような、自分たちが生きるためには余計な迷いを持たない狼のような男になっていったのです。
狼に憧れた男には別の名前もありました。
〝ホロケウオシコニ〟
ウイルクの名の由来を聞いたウイルクの妻が「狼に追いつく」という意味のアイヌ語の名を彼に付けたのです。
その名はウイルクと妻、娘のアシリパしか知りません。
そこに金塊への鍵があるようです。
【ゴールデンカムイ】娘に託したアイヌの未来とは?
ウイルクは金塊と共にアイヌの未来もアシリパに託そうとしていました。
アシリパを山で育てたのも、アイヌを導く存在にすべく、山で潜伏し戦えるようにするためだったと死ぬ直前に杉元に明かします。
それはソフィアのような、皆を引っ張る革命のリーダーに仕立てようとしていたということ。
自分の目的のための戦いにアシリパを巻き込もうとするウイルクの考えに杉元は怒りを露わにします。
しかし同じく子を持つ鯉登少将の捉え方では、アイヌに戦って死ねと促すならばまず自分の子を先頭に立たすのが筋だという、上に立つ父としての姿が見えたようでした。
そのウイルクが起こそうとしていた戦いの目的ですが、ソフィアの回想の中でウイルクが樺太・北海道を含めた極東連邦国家を作ろうという意志を持っていたことが明らかとなります。
そこが北海道を独立させようとしていた土方と目的が合致した点かと思いますが、ウイルクが目指す先には少数民族の文化や信仰を守ろうという志があったように思います。
しかしもしその構想が真意であれば、8千億円相当もの金塊を欲しがったことも納得ですね。
まとめ
謎に包まれたまま亡くなったウイルクですが、アシリパが彼の足跡を辿ることによって少しずつその動向や彼の目指したものが見えてきました。
そこには時代の流れの中で自分の故郷や北海道アイヌなどが大きな国に飲み込まれ消えゆくことへの危惧が感じられます。
そうなると〝アイヌの金塊を奪った〟という話には矛盾がある気がしますし、何故途中まで行動を共にしていたキロランケには託さなかったのかなど、彼に関する謎は未だに残っています。
自分たちの種が生きるために余分な優しさを捨てた狼ならではの行動があるのか。
ウイルクを知ることで物語が核心に迫っていくので、アシリパが辿っている彼の足跡に今後も注目ですね。

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