ゴールデンカムイに出てくる天才剥製職人・江渡貝弥作。
鶴見に出会ったことにより、刺青人皮争奪戦に混乱をもたらすこととなる重要人物です。
そして、剥製作りの実力の中に純粋な狂気を隠し持っていたことで、僅か数話の登場ながら未だに人気の高い愛されキャラクターです。
ここでは、その圧倒的にかわいく圧倒的に猟奇的と言われる江渡貝くぅぅんについてご紹介したいと思います。
目次
【ゴールデンカムイ】変人が多い作中の中でもピカイチの狂人
江渡貝くんは、夕張で「江渡貝剥製」を営む剥製職人の青年です。
こだわりと誇りを持って勤しむその剥製作りの腕も確かなのですが、彼の本質は、人間の剥製や人皮を使ったアイテムを多数製作するなど戦慄するほど猟奇的なもので、作中でトップクラスの狂人です。
しかし作品に対する情熱や幼稚な性格、鶴見に心酔する姿の愛らしさでそのヤバさを感じさせません。
極端なおぞましさと可愛さが見事に共存した稀有なキャラクターであり、数話だけの登場だったにも関わらず、ファンの心に大きな爪痕を残しました。
【ゴールデンカムイ】品質の良い剥製を作るために奈良から移住
剥製作りには死亡した動物の表皮が用いられるため、腐敗や虫害、カビなどの観点から、高温湿気が大敵です。
設備も現在ほど整ってはいなかったでしょうから、自然環境がとても重要だと言えます。
江渡貝くんは奈良生まれなのですが、奈良は盆地もあり夏は蒸し暑く冬は寒いという内陸性の気候ですので、剥製作りにあまり適した環境とは言えません。
そこで、気温が低くて乾燥している北海道へ引っ越して来ました。
剥製作りへの飽くなきこだわりのために居住地まで変えた江渡貝くんはまさに職人の鑑と言われるわけですが、北海道の中でも夕張であったのは、裏・江渡貝くんの思惑があったからです。
それは、流れ者も多く働く炭鉱。
江渡貝くんの真の志向は人の剥製やアイテム作りですから、事故の多い炭鉱付近は彼にとってまさに理想の地だったわけです。
【ゴールデンカムイ】母親から受けた偏愛で歪んだ人生
江渡貝くんは始めは職人気質のおとなしい好青年のような登場でしたが、剥製たちと普通に会話していたり、実は内面は幼稚なままだったりと、精神にどこか異常を感じます。
その人格は彼の母親が大きく影響していました。
母は〝父親は他の男と同じで悪い男〟であり、その父に似てきたからという理由で江渡貝くんを去勢したほど、自身の男性に対する異常な嫌悪感を押しつけて江渡貝くんを育ててきました。
彼の理解者であった父はその母に殺されています。
そういった偏った思想の中「あなたを愛する人間はいない」と孤独感を植えつけた上で「全部あなたのため」と彼を自分の檻に閉じ込め、江渡貝くん自身もその異常に気づくことなく異常な愛を受け入れて育ってきました。
極端に抑制され歪んだ愛情を受けて育った江渡貝くんは正常な成長が出来ず、母の死後もその支配に大きく影響されており、その遺体を剥製にして、生きているかのように共に過ごしていました。
本当の孤独を埋めるかのように、母以外にも何体もの人体剥製に囲まれ賑やかに暮らしていた姿に、彼の歪んだ人生への悲しさを感じますね。
これほどに彼を支配している愛する母ですが、江渡貝くんは自身の剥製を褒めてもらえることはありませんでした。
【ゴールデンカムイ】誰にも理解されることのない人皮アート
江渡貝くんは人間の剥製作りもしていますが、人皮を使った様々なアイテム作りが主なようです。
鶴見に母たちの剥製が見つかった時に唐突に被っていたマスクは衝撃を受けましたが、他にも奇抜な人皮服を大量に作っていますし、顔の貼り付いたバッグも所持しています。
鶴見たちが墓場で拾った手袋も、豚の皮と言っていますがおそらく人皮でしょう。
とにかく身の回りのもの全てが異常なほどに人皮なのです。
人皮は江渡貝くんという芸術家が見惚れた至極の素材なのでしょう。
【ゴールデンカムイ】鶴見中尉から褒め言葉で解放された抑圧
そうした江渡貝くんの異常なアートは、母たちの剥製群を見た鶴見の命を奪おうとしたように誰にも見せることなく自分の中でひっそり育んできましたが、鶴見は江渡貝くんの 性格や環境を分析し、見事にその心を開かせました。
自分の作品が正面から称賛され、理解・共感・興味を示してくれる鶴見に、江渡貝くんは芸術家としてこの上ない喜びを知ったに違いありません。
その鶴見に諭され剥製の母を撃ちその支配と決着をつけ、彼はついにその歪んだ巣から飛び立ちました。
本来の姿を解き放った江渡貝くんは、鶴見に似せた剥製まで作るほど心酔することとなります。
彼は抑圧された愛の中で、誰かに認めてもらったり褒めてもらったりということにとても飢えていたはずですので、自分を認めてくれる鶴見との間に、本当の居場所が出来たような心地良さを感じたのかもしれません。
【ゴールデンカムイ】鶴見との華々しいファッションショー
そして江渡貝くんは自分を全開放し、鶴見の要望に応え自身の作品をファッションショーさながらに披露します。
様々な人皮衣装を身に纏い、照れながらも嬉しそうに作品を披露する江渡貝くん。
鶴見はしっかり見て評価してくれるので、段々ノっていく様子が本当に微笑ましい。(けど着ているのは人皮です)
そして最後には鶴見と二人で、刺青人皮衣装でダンスするほど盛り上がりました。
おそらく殆どの読者が月島とともに「何なのだこれは…」と呟いてしまいましたよね。
アニメではさらに鶴見役のベテラン声優・大塚芳忠さんの「猫ちゃんのように!!猫ちゃんのように歩くんだ!!」の声とともに、気合の入った作画で異様にヌルヌル動いてとても臨場感(?)のある仕上がりになっており、その異常さが際立っていますので必見です。
【ゴールデンカムイ】偽物の刺青皮を作成し月島に全てを託す
愛する鶴見に褒めてもらうため、また芸術家として、本物以上のこだわりをもって依頼された偽物を完成させた江渡貝くんでしたが、尾形の襲撃により追われる立場に。
月島とともに炭鉱へ逃げ込みましたが、ガス爆発による落盤で身動きが取れなくなってしまいます。
最期を悟った彼は命乞いをするでもなく、偽物人皮とそれを見抜くヒントが鶴見に届くよう月島に託し、その命を終えました。
結局鶴見に「よしよしぺろぺろしてもらう」ことが叶わなかった江渡貝くんでしたが、本当の自分が注がれた芸術を理解してくれる人に出会えたこと、その人に自分の腕を買われ作品を依頼されたこと、そしてしっかり作品を作り上げ完遂出来たことで、その歪んだ人生を綺麗に閉じることが出来たのかなと思います。
【ゴールデンカムイ】モデルはアメリカの犯罪史に残る凶悪犯
江渡貝くんのモデルは、その猟奇性・異常性からアメリカ犯罪史に残る凶悪犯として有名なエド・ゲインだと言われています。
エド・ゲインは後世の映画「サイコ」「羊たちの沈黙」などの有名猟奇的作品にも影響を与えている人物で、本人を題材とした映画も作られているほど名高い人物ではありますが、想像を遥かに上回る異常性ゆえに、これから調べてみようと思われる方はかなり閲覧に注意してくださいね。
どうして江渡貝くんのモデルがエド・ゲインと言われるかは下記の部分です。
エド・ゲインは、母親による歪んだ偏愛を受けて育ち、その中でも母を信愛していました。
そして母の死後、孤独になった彼は異常行動が顕著になり、墓から死体を盗って、それを素材として家具・食器・ランプシェード・衣類・マスクなど様々なアイテムを製作するようになります。
この辺りが完全に一致していますよね。
もちろん名前も似せて命名したかと思います。
少し文字にしただけでも猟奇性が伝わってくる内容を、こんな愛嬌あるキャラに昇華させてしまう野田先生の手腕が一番恐ろしいですね。
まとめ
狂気かわいい江渡貝くんは、読者に衝撃を与えただけでなく、親に作られた殻を破り、金塊を巡る刺青人皮争奪戦に混乱を巻き起こすための大きな役目を果たしました。
江渡貝くんを懐柔した鶴見の人身掌握の手腕に目を見張りましたが、鶴見も江渡貝くんの技術を純粋に称賛しているようなので、そこが江渡貝くんの心を開いたのだと思います。
刺青人皮を巡って始めて出会ったのが杉元だったら褒められる喜びを知ることはなかっただろうし、変人同士はひかれ合うのか、江渡貝くんのためにも訪れたのが鶴見中尉で本当に良かったです。
もう出番は終わってしまいましたがこんな愛おしいキャラ忘れられないですよね。
この後まだ物語の大事な局面で偽物人皮が効いてくると期待していますので、江渡貝くんの情熱が報われる日を楽しみに待っていようと思います。
ちなみに、エド・ゲインに影響されて作ったという、ゴムで人皮を模したジャケットやバッグなどが発売され一時話題になりましたが、これを見ただけでもウゲッとなったので、江渡貝くんの華々しいファッションショーも実際にはかなりエグいと思われます。
猟奇とギャグの絶妙なバランスがゴールデンカムイの凄さですね。

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