ヘルブラムは、なぜ生きているのでしょうか
結論から言うと、ヘルブラムは200年前にキングの手で一度死んでいます。いま動いているのは、ヘンドリクセンの「死者使役の術」で蘇らされた体です。
鍵になるのは妖精族の遺体は腐らないという設定でした。この記事では、そこから最期までを起きた順に並べます。
この記事でわかること
- 200年前に一度死んでいること
- 遺体が闇ルートで転売された理由
- ヘンドリクセンが蘇らせた経緯
- 人間を愛していた妖精が、なぜ500年殺し続けたのか
- キングの罪状「怠惰」との関係
- 兜に宿ってからの、本当の最期
200年前、キングの手で一度死んでいます
枢機卿位の聖騎士として現れたヘルブラムの正体は、妖精王・キングの無二の親友であり、自身も妖精族のヘルブラムでした。
そして200年前、キングの手によって葬り去られています。
ここで効いてくるのが妖精族の遺体は腐らないということでした。その体は闇ルートに流され、人から人の手へと渡っていきます。
それを8年前に入手したのがヘンドリクセンでした。そして「死者使役の術」によって蘇生されます。
蘇ってもなお人間を憎んでいたヘルブラムは、魔神族の復活をもくろむヘンドリクセンに協力し、暗躍することになりました。
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「妖精族の遺体は腐らない」という設定が、この作品でいちばん残酷に使われた場面だと思っています。
ヘルブラムが人間を憎んだきっかけは、仲間の羽が高値で売買されたことでした。そして死んだあと、その本人の体が同じ闇ルートで売買されている。
キングが葬ったのは、せめてもの終わりのつもりだったはずです。それが商品になり、8年前に買われて、また立たされた。憎んだ理由と同じやり方で、終わりまで奪われている。
「なぜ生きてる」の答えが「売られたから」だというのは、この人物にとって二重の地獄だと読んでいます。
枢機卿位の聖騎士としての顔
蘇ったヘルブラムは、枢機卿位の聖騎士として振る舞います。ジェリコやギーラといった下級戦士の上司にあたる立場でした。
その中身は残虐非道で、罪のない民衆の犠牲すら顧みません。本来ならそんな人物がその地位に就けるはずもないのですが、二大聖騎士長ヘンドリクセンの推薦があったのです。
個性は「同調」。魔力を無限に借りられます
ヘルブラムの能力が『同調(リンク)』です。
- 相手が同意すれば、何人とでも同調できる
- 同調した相手から魔力を借りられる。条件がそろえば無尽蔵に引き出すことも可能
- さらに受けたダメージを、同調相手に身代わりさせられる
もともとの自分の力に上乗せできるうえ、痛みまで肩代わりさせられる。数を集めれば集めるほど強くなる、厄介な能力です。
もとは、人間を愛していた妖精でした
ここが、この人物の芯にあたる部分です。
妖精王のキングが人間を警戒していたのに対し、ヘルブラムは人間にとても好意的でした。
理由は、短い生を懸命に生きる姿が愛おしくて仕方がなかったから。人間独自の文化や、短命ゆえのものの考え方など、自分たちとの違いにも興味を惹かれていました。他者を理解したいと積極的に思える、心の広い妖精だったのです。
羽をむしり取られる仲間の声を聞いて、発狂しました
その好意が、そのまま牙になります。
ヘルブラムを中心に、人間に好意を抱いた妖精たちはたびたび人間の前に姿を現していました。ところがその羽を狙う人間が現れます。妖精族の羽は高値で取引される代物だったのです。
盗賊に捕らえられた仲間たちは、生きながらにして羽をむしり取られていきます。その狂気と絶望の声を聞いて、ついにヘルブラムは発狂しました。
そして人間への憎しみから、自らを捕らえた盗賊・アルドリッチの姿に化け、500年もの長きにわたって、罪のない人々さえも無差別に殺し続ける凶行に出ます。
本人の言葉が、これです。「俺っちは人間が憎い!だから五百年間殺し続けた!でも足りないんだ!」
キングの罪状「怠惰」は、この件を指しています
キングの罪状は「一人の妖精による人間の虐殺という凶行を見過ごした、妖精王としての〈怠惰〉」です。
この「一人の妖精」が、ヘルブラムです。
凶行が行われているあいだ、キングは記憶喪失のために妖精族の責務を果たすことができませんでした。止められなかった——それが『怠惰の罪』と呼ばれる所以です。
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この2人がやり合う場面で、いちばん重い台詞はここだと思っています。
キングが「君にだってわかるだろう。大切なものを失う心の痛みが…!!」と叫び、ヘルブラムが「ならチミにわかるか?目の前で大切なものを壊される痛みが…!!」と返す。
どちらも正しいところが、この作品の厳しさです。キングは失いました。ヘルブラムは目の前で壊されるのを見ています。失うのと、見せられるのは違う。
そして記憶喪失で何も知らなかったキングは、500年ぶんの怒りを何も知らないまま受け取っている。この会話が名シーンとして残っているのは、勝ち負けの話をしていないからだと思います。
キングとの死闘で、狂気が消えました
エリザベス奪還戦で、ついにキングと激突します。
本来の妖精族の姿に戻って戦いますが、敗北。そして最期の瞬間、長い長い時間ヘルブラムを支配していた狂気が消え、元の心優しいヘルブラムに戻りました。
彼は静かに、親友・キングの腕の中で死出の旅に出発します。
かつて交わした約束を果たすため、キングは自ら息の根を止めました。長いあいだ友を苦しませていたことを知ったキングは、後悔の涙を流しています。
そのあと、兜に宿ってキングを見守ります
ヘルブラムはそこで消えませんでした。
キングの妹・エレインの頼みや、自分を利用していたヘンドリクセンの動向も気になり、現世に留まることを選びます。何より、キングのことが心配で仕方がなかったのです。
宿り先が、ずっと身に着けていた兜でした。
この兜には来歴があります。ヘルブラムが作中に初めて登場したバイゼルけんか祭りで、小柄な審判に化けていた彼がかぶっていた品です。もとはまだ人間を信じていたころに、キングへの贈り物として闇商人から譲り受けたものでした。そして人間を憎むようになってからは、自身への戒めとして身に着けていたのです。
その兜に宿ったヘルブラムは、キングがかぶったときにだけ現れて対話できます。喜びも悲しみも、兜を通せば2人はつながれました。
本当の最期は、壊滅都市コランドでした
何百年も前にヘルブラムが命を奪った人々の怨念が渦巻く壊滅都市・コランド。ここで、本当の別れが訪れます。
この街を訪れた際、『十戒』のメンバーメラスキュラによって増幅された怨念が、ディアンヌに取り憑いて彼女を支配しました。
仲間を助けるため、ヘルブラムは叫びます。怨みを晴らす相手は自分だ、と。
本来の相手を見つけた怨念は、兜ごとヘルブラムを潰して消滅させました。
失われた命は戻りません。それでもけじめをつけるようにこの世での責務を全うし、永遠の眠りにつきました。
まとめ|ヘルブラムの生死をどう読むか
ヘルブラムが生きていた理由は、ヘンドリクセンの「死者使役の術」で蘇らされたからです。
決め手だけ並べます。
なぜ生きていたのか
- 200年前にキングの手で死亡している
- 妖精族の遺体は腐らないため、闇ルートに流されて転売された
- 8年前にヘンドリクセンが入手し、「死者使役の術」で蘇生した
- 蘇ってからは魔神族の復活をもくろむヘンドリクセンに協力していた
なぜ人間を憎んだのか
- もとは人間を愛する素朴な妖精で、短い生を懸命に生きる姿を愛おしく思っていた
- 高値で売れる羽を狙われ、仲間が生きたままむしり取られるのを聞いて発狂
- 盗賊アルドリッチの姿に化け、500年にわたり無差別に殺し続けた
- キングの罪状「怠惰」は、この凶行を止められなかったことを指す
最期
- エリザベス奪還戦でキングに敗北。狂気が消え、親友の腕の中で息を引き取る
- その後兜に魂として宿り、キングがかぶったときだけ現れて対話した
- 壊滅都市コランドで、ディアンヌに取り憑いた怨念を自分に向けさせ、兜ごと潰されて消滅
僕はこう読む
ヘルブラムの終わり方が効いているのは、最後に自分から怨念を引き受けたからだと思っています。
キングに斬られた時点で、この人物は許されています。狂気は消え、親友の腕の中で逝きました。物語としては、あそこで終わってよかった。
それでも留まり、兜に入り、最後はディアンヌを助けるために自分が殺した人々の怨念を、自分に向けさせた。
500年ぶんの憎しみを外に向けていた妖精が、最後はその全部を自分に向け直して消えている。「なぜ生きてる」という問いの答えは蘇生ですが、なぜ留まったのかの答えは、たぶんここです。
そのうえで、まだ残る問いがあります。ヘルブラムの遺体が200年のあいだ誰の手を渡り歩いたのかは、描かれていません。腐らない妖精族の体が闇ルートで転売され続け、8年前にヘンドリクセンへ届いた——その192年のあいだ、彼はどこに置かれていたのか。ここは空白のままです。
——あなたはヘルブラムが蘇らされたことを、キングにもう一度会うための救いだったと思いますか。それとも、終われるはずだった人が終われなかった不幸だと思いますか。よければコメントで、あなたの読み方を聞かせてください。
よくある質問
ヘルブラムは200年前に一度死んだあと蘇っているため、生死の話が混ざりやすいキャラクターです。順番に切り分けて拾っておきます。
Q. ヘルブラムはなぜ生きているのですか
A. 200年前にキングの手で死亡しましたが、妖精族の遺体は腐らないため闇ルートで転売され、8年前にヘンドリクセンが入手して「死者使役の術」で蘇生させたためです。
Q. ヘルブラムは死亡したのですか
A. はい。エリザベス奪還戦でキングに敗れて息を引き取り、その後は兜に魂として宿りました。最終的には壊滅都市コランドで、怨念に兜ごと潰されて消滅しています。
Q. ヘルブラムはなぜ人間を憎むようになったのですか
A. 高値で取引される羽を狙われ、仲間が生きたままむしり取られる声を聞いて発狂したためです。その後、盗賊アルドリッチの姿に化けて500年にわたり無差別に人を殺し続けました。
Q. ヘルブラムの能力は何ですか
A. 『同調(リンク)』です。相手が同意すれば何人とでも同調でき、魔力を借りて自分に上乗せできます。受けたダメージを同調相手に身代わりさせることも可能です。
Q. キングの罪状「怠惰」とヘルブラムの関係は何ですか
A. 罪状は「一人の妖精による人間の虐殺という凶行を見過ごした、妖精王としての〈怠惰〉」で、この妖精がヘルブラムです。当時キングは記憶喪失で責務を果たせませんでした。
Q. ヘルブラムが宿った兜は何ですか
A. バイゼルけんか祭りでかぶっていたものです。まだ人間を信じていたころにキングへの贈り物として闇商人から譲り受け、人間を憎んでからは自身への戒めとして身に着けていました。
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この記事を書いた人:カイ。読み終わったあとの「なんでここ、こう描いたんだろう」を、一人で考えています。→ 運営者情報
最終更新:2026年9月8日


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