『ゴールデンカムイ』はアイヌの金塊を巡る物語で、杉元・アシリパらの独立勢力、土方歳三率いる土方一派、鶴見率いる第七師団という3勢力の三つ巴の金塊争奪戦が描かれています。
いずれも応援するに足る魅力的な勢力ですが、主人公である独立勢力と土方一派は協力関係にあることも多い一方で、第七師団は敵というイメージが強くなっていますね。
そこで本記事では改めて敵としての第七師団について見ていきたいと思います。
第七師団とは何なのか、師団内の階級やメンバー、金塊を求める目的、鶴見の目的、敵としての存在感などなど『ゴールデンカムイ』における第七師団について徹底的に解説していきます!
目次
【ゴールデンカムイ】第七師団は鶴見が率いる造反部隊!!
金塊を狙う勢力の一角が第七師団。
第七師団は北海道に置かれた大日本帝国陸軍の常備師団で、北海道の開拓と防衛を兼ねて設置された屯田兵を母体とする、北の守りを担う重要師団です。
日露戦争では旅順攻囲戦・奉天会戦という激戦地にて勝利に貢献した陸軍最強の師団で、道民からは畏敬の念を含めて「北鎮部隊」と呼ばれていました。
物語はちょうど日露戦争が終わった1年半後くらいから始まるので、臨機応変な戦闘力や統制された組織力など戦争で培った最強たる経験値を感じることが出来ます。
重要なのは本作で言う「第七師団」とは、主に歩兵第27聯隊に所属する鶴見中尉と彼に従う部下たち約100名を指すこと。
つまり軍の意思ではなく鶴見が独断で行動を起こしているのです。
彼らは中央の指揮から外れた言わば“造反部隊”“反乱分子”であり、独自に刺青人皮を追っていました。
【ゴールデンカムイ】第七師団の目的は??
北海道に軍事政権をつくる
鶴見が部下たちに語った第七師団の目的は、北海道に軍事政権を作ること。
理由は、第七師団が二〇三高地に旗を立てるほど大貢献した旅順攻囲戦にあります。
この大貢献の裏には上層部の強硬な指示と、それにより生じた多大な犠牲がありました。
しかしそれが「正面突破に固執し多数の将兵を戦死させた」と揶揄され、第七師団長であり参謀長でもあった花沢幸次郎中将が自害。(本当は尾形が殺害していましたが)
そして中将が自害したのは部下の落ち度であるとされ、第七師団は勲章や報奨金はおろか、陸軍内でも冷遇されるようになってしまったのです。
この不当な仕打ちを受け鶴見が持ち出したのがアイヌの金塊なのです。
ただし鶴見は金塊を分け合うのではなく、軍事政権を作り武器工場を中心とした豊かな生活基盤を作ることにより、死んでいった戦友たちや戦死者の遺族に報いようと部下たちに呼びかけたのでした。
弔いのための領土拡大
さらに鶴見はその先、日本の領土拡大という目的も示していました。
具体的には満州です。
それは“戦友たちが眠る土地を日本にするため”と部下たちに語っていました。
そしてウラジオストク。
ウラジオストクは鶴見が長谷川幸一としてスパイ活動を行っていた地であり、当時いた妻子(フィーナとオリガ)がウイルクに撃たれ亡くなった場所です。
これは鶴見が秘める過去であり(後に月島と鯉登が盗み聞きしますが)、完全に個人的な弔いではありますが、同じく“2人が眠る地を日本の領土に”という目的があります。
日本国の繁栄
しかし領土拡大による“弔い”はあくまでも道中に捧げる祈りであり、鶴見の真の目的には日本国の繁栄という大義がありました。
ロシアの南下や他国の脅威から日本を守るために軍資金を必要としていたのです。
この主張に対して読者は疑念を抱いていましたが、最終回直前の第313話でどうやら本心のようだと感じることが出来ました。
ただし鶴見はここまで公に語ることはなかったようなので、部下たちはあくまでも仲間たちの弔いや陸軍内での地位の向上、あるいは単純に鶴見についていくためといったことを目的に鶴見に従っていると考えられます。
【ゴールデンカムイ】第七師団の第27聯隊の階級や構成は??
第27聯隊の構成とは?
第七師団歩兵第27聯隊とは、旭川に4つある歩兵聯隊の1つです。
聯隊は中佐が率います。
聯隊は大隊3つから成っており、1大隊をそれぞれ少佐が率いています。
大隊は中隊3つから成っており、1中隊をそれぞれ大尉が率いています。
中隊は小隊4つから成っており、1小隊をそれぞれ中尉が率いています。(鶴見はここ)
1小隊の兵員は100人弱。
歩兵のほかに騎兵聯隊や砲兵聯隊などがあり、第七師団は合わせて約2万の兵で編成されています。
鶴見たちの階級は?
陸軍の階級には一番上に将官≪大将・中将・少将≫があります。
トップクラスの指揮官で、第七師団長の花沢幸次郎が中将にあたります。
海軍ですが鯉登の父・平二も少将です。
その下に佐官≪大佐・中佐・少佐≫。
27聯隊長の淀川輝前が中佐です。
その下に尉官≪大尉・中尉・少尉≫。
和田光示が大尉。
鶴見篤四郎はその下の中尉。
鯉登音之進がその下の少尉です。
ちなみに鯉登は士官学校を卒業したての新任少尉であり、上級指揮官へと進むために経験豊富な叩き上げの軍曹(月島)による補佐を受けているところです。
また故人・花沢勇作も少尉でした。
これまでご紹介したのが将校(士官)で、その下が准士官≪准尉・特務曹長・兵曹長≫。
菊田杢太郎が特務曹長です。
その次が下士官≪曹長・軍曹・伍長≫。
月島基が軍曹ですね。
強い口調で窘めることもありますが、階級的には鯉登より下なので敬語です。
そしてこれより下が一般階級と言える兵《兵長・上等兵・一等兵・二等兵》となります。
中でも上等兵は優秀な兵で、宇佐美時重や尾形百之助がこれにあたります。
その他ほとんどの兵は一等卒であり、第七師団では二階堂浩平・洋平がそうですし、恐らくモブといえる兵たちも一等卒でしょう。
また谷垣や有古も一等卒で、第七師団ではありませんが杉元も一等卒でした。
こうして見ると鶴見が率いているのは第七師団でもほんの一部であり、階級も鶴見含めてそれほど高くないんですよね。
ただし鶴見は弱みに付け込み淀川中佐を傀儡としているため実質27聯隊のトップと言えますし、花沢中将や和田大尉も殺害していますし、鯉登平二も手駒にしていますし、陸軍中将の有坂成蔵とも懇意にしていますから、立場以上の力を握っていると言えます。
【ゴールデンカムイ】第七師団はなぜ悪役なのか??
第七師団は金塊争奪戦における杉元たちのライバルであり、最大の敵として描かれています。
その背景には和人によるアイヌの不当な差別と戦いの歴史がありそうですが、この時代として特記すべきは1869年(明治2年)の北海道化です。
明治新政府は蝦夷地を「北海道」として一方的に日本の一部とし、屯田兵や一般農民を次々に入植。
和人の増加によってアイヌへの差別・迫害はより進み、独自の文化も実質禁止されて和人の文化を強制されるなど、アイヌはどんどん居場所が奪われていきました。
つまり言ってしまえば屯田兵を母体に持つ第七師団は、アイヌにとって自分たちの生活が奪われるきっかけとなった悪の象徴。
「アイヌの文化を守る」という目的を持つアシリパに対しての、まさに敵と言えるわけです。
そして実際に鶴見はアイヌの未来など特に視野に入れていませんでした。
土方との違い
一方で同じ和人である土方は、アシリパひいてはウイルクと協力関係にありました。
鶴見・土方どちらも大まかにいえば「ロシアの南下や他国の脅威から日本を守る」という目的で一致しているのですが、その違いはやはりアイヌとの関係性です。
“北海道を独立させ、海外から移民を募り多民族国家を築く”という構想の土方は、アイヌからの信頼や支持が必要不可欠だと考えていました。
対し“北海道を軍事政権とし日本の領土拡大を図る”という鶴見は、和人もアイヌも同胞として考えています。
一見差別がないと良い意味で捉えられそうですが、やはり時代的には北海道化の延長戦のような考えであり、勝手に軍事政権とすることでよりアイヌのアイヌとしての居場所を奪っていくとも考えられるのです。
やはり「アイヌを守る」と考えているアシリパにとって敵であり、それをテーマとする『ゴールデンカムイ』において悪役となるわけです。
【ゴールデンカムイ】第七師団の五稜郭で死んだ隊員は??
物語においては悪役とはいえ彼らにも彼らなりの目的と覚悟があり、キャラクターとしても本当に魅力的な人物ばかりです。
しかし金塊争奪戦の最終決戦にて3人が死亡してしまいました。
1人目は宇佐美。
宇佐美は第256話、札幌・札幌ビール工場にて尾形に撃たれ死亡しました。
2人目は菊田。
菊田は中央のスパイであり、その証拠を掴んだ鶴見に第280話札幌の教会にて撃たれ、月島によりとどめを刺されました。
3人目は二階堂。
二階堂は第295話、函館・五稜郭にて杉元との戦闘の末に死亡しました。
いずれもクセが強い人気キャラクターだったので、いなくなるというのはとても衝撃的でした。
また彼らを率いてきた鶴見も、函館にて瀕死のまま列車と共に沈み生死不明となります。
鶴見がいなくなったことで第七師団の反乱分子としての活動は終わりを迎えたのでした。
まとめ
第七師団は陸軍最強と言われた「北鎮部隊」ですが、金塊を探しているのはその中でも鶴見中尉率いる約100名の小隊であり、軍にとっては造反部隊です。
その目的は旅順攻囲戦に対しての不当な仕打ちに対する不満と亡き戦友たちの弔い。
さらに鶴見にはその先、日本を守るための領土拡大という目的がありました。
ただしこの目的においてはアイヌの生活や文化が守られるとは思えず、また軍に背いての活動なので、作中では悪役として描かれています。
魅力的な勢力で人気も高いですが、見方を変えるとアイヌやアシリパの視点だと敵、軍視点だと危険分子と「悪」なので面白いですね。

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