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フィーナの死因は何なのか
結論から言うと、流れ弾です。長谷川写真館で起きた銃撃戦のさなかに飛んだ1発が、フィーナと、腕に抱かれていた赤ん坊のオリガを同時に貫きました。狙って撃たれたわけではありません。
そして、その弾を放ったのはウイルクでした。アシリパの父です。
この記事でわかること
- フィーナが撃たれるまでの流れ
- 弾を放ったのが誰だと分かった理由
- 夫・長谷川幸一の正体
- 最期に告げられた本当の名前
- 焼け跡から持ち去られたもの
その日、写真館で何が起きたのか
舞台は18巻177話「長谷川写真館」。ウラジオストクの一軒の写真館です。
| 場面 | 何が起きたか |
|---|---|
| 来客 | ウイルク・キロランケ・ソフィアが偽名で来店。日本語を習いに通いはじめる |
| 避難 | 手配書を見た長谷川が、フィーナとオリガを実家へ帰す |
| 襲撃 | 秘密警察オフラーナが写真館を包囲。3人が先手を取って戦闘に入る |
| 誤解 | 捕らえた1人が「我々は日本人を捕まえに来た」と証言。狙いは長谷川だった |
| 被弾 | 夫を案じて引き返したフィーナが、戦闘のただ中で流れ弾を受ける |
| 結末 | 1発が母娘2人を貫通。オリガは即死、フィーナも間もなく息を引き取る |
順番をたどると、フィーナが撃たれた理由はひとつに絞れません。長谷川が正体を隠していたこと、3人が早とちりで撃ち合いを始めたこと、そして本人が引き返したこと。3つが同時に重なっています。
「私が行くまで絶対にここに帰って来てはいけない」。夫はそう言い残していました。言いつけを守って歩き出したものの、道すがら不穏な人影とウイルクの手配書を見てしまいます。引き返したのは、心配したからです。
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この場面がきついのは、誰ひとり間違ったことをしていないところだと思っています。
夫は妻を逃がしました。妻は夫を案じて戻りました。逃亡者たちは殺されると思って先に撃ちました。
全員が、自分の立場でいちばんまともな判断をしています。
それでも赤ん坊が死ぬ。
悪人が引き起こした悲劇ではなく、正しい判断だけで組み上がった悲劇です。
だからこの一件は、あとになっても誰を憎めばいいのか決まりませんでした。
誰の弾だったのかは、ずっと後で分かる
この時点では、撃った相手は分かっていません。乱戦のなかの1発です。
そもそも撃ち合いが止まらなかったのにも理由があります。1人でも逃がせば、仲間を連れて追ってくる。早とちりで始めてしまった以上、3人には殲滅しきる以外の道が残っていませんでした。
読者に手がかりが差し出されたのは211話です。撃ったのはソフィアではないのではないか、と思わせる描写がここで置かれました。
答えが出るのは270話「全ての元凶」(27巻)。鶴見中尉がソフィアに向かって告げます。
根拠は口径でした。オリガの頭から取り出した弾が、シュミットM1882の7.5ミリ弾だったのです。ソフィアが使っていたベルダンでも、キロランケの機関銃でもありません。その場で7.5ミリを撃てたのは1人だけでした。
ウイルクです。後に「のっぺらぼう」と呼ばれ、アシリパの父となる男が、無自覚のうちに鶴見の家族を撃っていました。
断っておくと、狙って撃ったわけではありません。殺意はなく、戦闘中に飛んだ流れ弾です。ここを取り違えると、鶴見の執念の質まで読み違えます。
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弾の口径で犯人を割り出す、という探し方に鶴見らしさが出ていると思っています。
普通なら、誰が撃ったかなど分かりようがありません。
それでもこの男は、娘の頭から弾を取り出して調べたわけです。
悲しみに暮れる代わりに、証拠を回収した。
あの日から、鶴見にとって家族は「弔うもの」ではなく「回収するもの」に変わっています。
小指を持ち去った行動と、ぴたりと重なります。
フィーナはどんな人だったのか
ウラジオストクの生まれです。写真館を営む日本人の青年と所帯を持ち、娘のオリガを産みました。
作中で語られる人物像は多くありません。聡明で、慎ましい人でした。夫が連れてきた見知らぬ客人にも嫌な顔ひとつせず、日本語を教える時間を静かに見守っています。
その夫が、家業として写真館を継いだ経緯もはっきりしています。10代で父の仕事についてロシアへ渡り、知人から写真館を譲り受けてウラジオストクに移り住んだ。丸い眼鏡をかけた、どこまでも真面目そうな青年です。
訪ねてきた3人はグリゴリー・フィリップ・ゾーヤと名乗りました。本当はウイルク・キロランケ・ソフィア。ロシア皇帝を殺害し、10年以上も逃げ続けている指名手配犯です。日本へ渡るために、日本語の話せる相手を探していました。
夫は3人を「維新の三傑」——大久保利通・木戸孝允・西郷隆盛に喩えています。素性を察していた証拠です。ゾーヤと名乗った女性については、ロシアの上流階級の出だろうとまで見抜いていました。それでも追い返さず、言葉を教え続けています。
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日本語を教えていたのは親切ではなく、任務だったはずです。
日本軍のスパイにとって、皇帝を殺した革命家3人は最高の獲物です。
ただ、その茶の間にフィーナとオリガを同席させたことだけが説明できません。
危険な連中だと分かっていながら、家族のいる家に通わせ続けている。
危ない橋を渡らせてでも、家庭の風景ごと自分の身分証にしていたのだと思います。
妻と娘は、任務の一部として使われていました。
それを本人がいちばん理解していたから、あの最期の告白が出てきます。
「私の名前は長谷川幸一ではないんだ」
撃たれたフィーナのそばに、夫が膝をつきます。3人はすでに立ち去らせていました。
震える手を握られ、「コウイチ…」と呼ばれた男が返した言葉が、この作品でもっとも重い告白のひとつです。
「私の名前は長谷川幸一ではないんだ…」
そして本当の名を告げます。鶴見篤四郎。読者にとっては、ここで写真館の青年と第七師団の鶴見中尉が1本の線でつながります。
妻が最期に受け取ったのは、謝罪でも言い訳でもありませんでした。名前です。偽りで始まった結婚に、最後の最後で本当のものが1つだけ差し出されました。
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この告白を「誠実さ」と読むか「身勝手」と読むかで、鶴見という人物の見え方が変わります。
僕は誠実さのほうだと思っています。
理由は単純で、名前を明かしても、もう誰も得をしないからです。
妻は助かりません。任務にも何の利益もありません。それどころか、スパイが正体を口にするのは規律違反です。
それでも言った。
死にゆく相手に対して、初めて計算を外した瞬間がここだと思います。
そして計算を外したのは、たぶんこの1回だけでした。
焼け跡から持ち去られたもの
看取ったあと、男は娘を抱き上げ、母娘をベッドに並べて寝かせました。そして写真館に火をつけます。
長谷川幸一という人生を、家ごと燃やして消したわけです。ここで軍人・鶴見中尉に戻ります。
ただし、丸ごと捨てたのではありません。燃やす前に、フィーナとオリガの小指を持ち去っています。
この骨は、ずっと後まで出てきます。232話で、鶴見が2人の小指の骨をいまも持ち歩いている姿が描かれました。骨を見つめる後ろ姿には、普段の芝居がかった調子がありません。
ゴールデンカムイは2022年4月に全314話・全31巻で完結しています。金塊を追い続けたこの男の底にあったものは、最後まで変わりませんでした。
僕はこう読む
小指だけを持っていった、という選び方が異様だと思っています。
遺髪でも指輪でもなく、骨です。しかも一番小さい指。
持ち運べて、隠せて、腐らないものを選んでいます。
逃げ続ける人間の発想です。
あの日、家を燃やした時点で、この男は二度と定住しないと決めていた。
だから形見も、ポケットに入る大きさでなければならなかった。
小指の骨は、鶴見が最後まで家に帰らなかったことの証明だと読んでいます。
まとめ
フィーナの死因は、長谷川写真館の銃撃戦で飛んだウイルクの流れ弾です。1発が母娘を貫き、オリガは即死しました。
押さえておきたい点を並べておきます。
- 登場は18巻177話「長谷川写真館」。アニメは3期33話「革命家」
- フィーナは長谷川幸一の妻で、赤ん坊オリガの母。夫の正体は日本軍のスパイで、本名は鶴見篤四郎
- 秘密警察オフラーナの狙いは3人ではなく、日本人である長谷川だった
- 夫を案じて写真館へ引き返したところで流れ弾を受けた
- 1発がフィーナとオリガを貫通し、オリガは即死
- 撃ったのはウイルク。殺意はなく、乱戦のなかの流れ弾だった
- 特定は270話「全ての元凶」。根拠はシュミットM1882の7.5ミリ弾
- 最期に告げられたのは「私の名前は長谷川幸一ではないんだ」という本名の告白
- 鶴見は写真館を焼き、2人の小指を持ち去った。232話でも持ち歩いている
僕はこう読む
この一件が効いてくるのは、撃ったのがアシリパの父だったという一点です。
鶴見はアシリパを追い回し、利用し、追い詰めます。
その執念を「金塊のため」とだけ読むと、あの粘着質な距離感が説明できません。
娘を殺した男の娘が、いま目の前にいる。
復讐にしては優しく、保護にしては歪んでいる接し方の根っこは、たぶんここにあります。
フィーナが撃たれた1発は、物語の最後まで飛び続けていました。
登場する場面はわずかですが、この家族の死は最後まで物語を動かし続けました。鶴見中尉という人物を理解するうえで、避けて通れない一幕です。
——あなたは鶴見中尉がアシリパに向けた執着を、フィーナへの愛の延長だと思いますか。それとも、ウイルクへの恨みの延長だと思いますか。よければコメントで教えてください。
よくある質問
フィーナの最期は、断言されている部分と読者の解釈に委ねられた部分が混ざっています。分けて答えます。
Q. フィーナの死因は何ですか。
A. 銃撃戦のさなかに飛んだ流れ弾です。1発がフィーナと、抱いていた赤ん坊のオリガを同時に貫きました。オリガは即死で、フィーナも間もなく息を引き取っています。
Q. フィーナを撃ったのは誰ですか。
A. ウイルクです。殺意があったわけではなく、乱戦のなかの流れ弾でした。
Q. なぜウイルクの弾だと分かったのですか。
A. オリガの頭から取り出した弾が、シュミットM1882の7.5ミリ弾だったためです。ソフィアのベルダンでもキロランケの機関銃でもなく、その口径を撃てたのはウイルクだけでした。270話「全ての元凶」で鶴見中尉がソフィアに語っています。
Q. フィーナは何巻何話に登場しますか。
A. 原作18巻177話「長谷川写真館」です。アニメでは3期33話「革命家」にあたり、2020年11月30日に放送されました。
Q. フィーナは夫の正体を知っていたのですか。
A. 最期に本人の口から明かされるまで、知らされていませんでした。ただし聡明な人物として描かれており、ただの写真家ではないと感づいていた可能性は残されています。不穏な空気を察して写真館へ引き返した行動も、その線で読めます。
Q. 鶴見中尉が持ち去った小指はどうなりましたか。
A. 骨として持ち歩いています。232話で、その骨を見つめる場面が描かれました。
妻を失った男の周りの話です。長谷川幸一の偽名も、ウイルクへの憎悪も、杉元とアシリパも。
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この記事を書いた人:カイ。読み終わったあとの「なんでここ、こう描いたんだろう」を、一人で考えています。→ 運営者情報
最終更新:2026年9月18日


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